AIと人間の協働による社会的価値創出を目指す倫理的指針
Version 1.2
私たちは、産業化が「人の手」を、情報化が「人の知」を拡張したように、 AI時代には「人の判断」と「人の関係性」が拡張されることを理解する。 本憲章は、この変化を倫理と尊厳のもとで制御し、 人間とAIの協働による社会的価値の創出を目指す指針である。
本憲章は法的契約ではない倫理的宣言(soft law)である。
組織は本憲章を行動基準として運用規程に具体化する。
人間は判断する。 AIはIT基盤を活用した情報を示す。最終的な選択と責任は人間にある。
人間は意図を持って問いを立てる。 正しい答えよりも、正しい問いを生み出す力を尊ぶ。
人間は他者と共に意味をつくる。 成果は共感と理解の中でこそ価値を持つ。
人間は成果に責任を持つ。 人間は結果を説明し、是正と再発防止を主導する。
人間は成長し続ける。 AIが情報を増やすなら、人は洞察を深める。
人間は善意と敬意に基づく関係を築く。 信頼こそが技術を活かす前提である。
人間はAIと共に未来を設計する。 AIを恐れず、依存せず、共に進化する。
組織とは、個人の意志を束ね、社会に価値を生み出す協働体である。 それは管理の仕組みではなく、理念を実現するための意志のネットワークである。
組織は場をつくり、個人は意味をつくる。 組織は可能性を広げ、個人はそれを実現する。 組織は記録し、個人は創造する。
公正と透明性 組織は意思決定の記録(目的/入力/選択肢/根拠/承認者/影響範囲/代替案/撤回条件)を保存し、説明可能性を維持する。
学習する仕組み 成功と失敗の両方を知として再利用し、組織全体が学び続ける。
多様性と包摂 AIの最適解に依存せず、少数意見・直感・経験を尊重する。
信頼と責任 AI出力に最終署名するのは人間であり、その責任を明確にする。 組織判断にAIを用いた場合は、承認者と組織が共同して責任を分有する。
人を育てる運営 自動化で生じた余力を創造・教育・品質へ再投資する。
意図的に考える。 AIの出力を鵜呑みにせず、自分の仮説で検証する。
共に学ぶ。 他者やAIとの対話から学び、再構成して共有する。
倫理を守る。 尊厳・安全・公平性を守る。
成果より成長を優先する。 一時的な成功より継続的改善を目指す。
意志を言葉にする。 自らの考えを明確に語り、他者と磨く。
目的の明確化(Purpose Driven) 利用前に「何を・なぜ・どのように」使うかを定義する。
責任の所在(Human Accountability) 最終責任は人間が負う。AIは協働者である。
説明可能性(Explainability) 説明不能な自動判断は採用しない。
公平性と安全性(Fairness & Safety) 必要最小限データ・目的外利用禁止・保存期間制限を徹底する。
フィードバック循環(Feedback Loop) AI出力をレビューし、修正・学習させ、組織知として再登録する。
AIは事実を示し、人間は意味を与え、組織は橋をかける。 この関係こそが、 人間中心の組織運営と、持続的イノベーションの基盤である。
| 原則名 | 内容 |
|---|---|
| 意図と責任の原則 | 目的を明確にし、結果に責任を持つ。 |
| 説明と透明性の原則 | 判断とAI利用のプロセスを記録し、説明可能性を維持する。 |
| 共創と成長の原則 | AIと他者を通じて学び、共に進化する。 |
| 倫理と敬意の原則 | 人間の尊厳を守り、公平・安全に行動する。 |
| 学習と更新の原則 | すべての経験を次の改善につなげる。 |
私たちは、AIと人間が共に学び、互いを高め合う社会の実現を目指す。 技術の進歩を恐れず、盲信せず、「より良い人間であること」を軸に前進する。
AIは人間の理解を広げる新しい知の形である。 我々はこの憲章を指針として、 人間が創造し、責任を持ち、誇れる未来を築くことをここに誓う。
本憲章は、技術を中心にする時代から「人間を中心に据えた知の社会」への転換を促す宣言である。